こんにちわ2019年5月号 近視抑制に関する最新の話題 眼科部長 松岡美紀子
近視は、「無調整の状態で眼に入る平行光線が網膜の手前で結像する目の屈折状態」と定義されています。裸眼では近くは見えますが、遠くは焦点が合わないのでぼやけてしまいます。近視は眼の長さ(眼軸長)が長くなり発症すると考えられていますが、その詳細な原因については未だ不明です。近視人口は世界的に増加の一途をたどり、現在では世界の人口の約3分の1である25億人といわれ、歯止めがかけられない状況にあります。
近視は遺伝因子と環境因子の相互作用により発症、進行すると言われていますが、近年の近視人口の増加は環境因子によるところが大きいと考えられています。関係が推測されている主な因子として、近見作業の増加(携帯ゲーム、コンピューター、スマートフォン、読書など)や屋外活動時間の減少が挙げられています。
屋外活動が近視抑制に関係があることは、これまで世界のさまざまな研究チームにより報告されてきました。近視研究会による学童の近視進行予防項目でも、1日2時間以上の屋外活動が推奨されています。しかし、屋外活動のうち何が近視抑制に効いているのかは不明でした。そんな中、新たな研究結果として、太陽光に含まれる紫色の波長の光「バイオレットライト」が近視抑制に大きく関係しているということが報告されました。「バイオレットライト」は紫外線ではなく、紫外線の手前にあたる波長360~400nmの紫色の可視光線で、太陽光には豊富に含まれていますが、屋内で使われる蛍光灯やLEDライトにはほとんど含まれていません。近視を予防する方法の一つとして注目されている「バイオレットライト」。現在もさまざまな研究が進んでおり、さらなる近視進行のメカニズム解明が期待されています。