こんにちわ2021年6月号 緊急手術を要する腸閉塞(ちょうへいそく)について 副院長 外科 小野仁志
消化器外科医が関与する、急に腹痛を起こす疾患に腸閉塞があります。
腸閉塞は、腸管の閉塞により内容物の通過が停止し、状況により重篤な障害を受ける状態です。原因としては、癒着、ヘルニア、癌などの腫瘍、異物、炎症性腸疾患、宿便、腸ねん転などがあります。小腸閉塞の3症状としては、けいれん性の腹痛、嘔吐、便秘です。大腸閉塞の症状は小腸閉塞より徐々に表れる、便秘の増強、腹部膨満です。
診断で重要なことは、緊急に手術を行う必要があるか否かです。腸管の絞扼(こうやく)つまり血流の途絶を伴う場合は緊急手術の対象です。絞扼は静脈の閉塞で始まり、続いて動脈が閉塞し、腸管壁の急速な虚血が起こることが多く、腸管は腫脹して梗塞(血管が詰まり)し、壊死(腸が腐り)し、穿孔(穴が開く)を起こします。絞扼の有無については、画像診断が有用です。単純CTあるいは、造影剤を使った造影CTなどで絞扼性変化を認めた場合は、緊急手術が必要です。
絞扼を起こす腸閉塞は、手術既往がある場合は、臓器の癒着による腸管の捻じれが多く、手術既往がない場合では、ヘルニア陥頓や腸重積症、腸ねん転が原因にあげられます。
ヘルニア陥頓は、大腿ヘルニアや鼠経ヘルニアがあり、その部に腸管が嵌入し、虚血性変化を伴う場合で、徒手的に整復できず、陥頓が解除されない場合、手術が必要です。
そのほか、大網や腸間膜に穴がある場合などその穴に腸管が挟まれ(内ヘルニアという)、手術が必要となることがあります。
腸重積は、成人では腫瘍が先進する場合が多く、重積が解除されない場合、手術が必要です。腫瘍には大腸がんによるものと良性腫瘍のものがあります。
大腸捻転は、盲腸捻転とS状結腸捻転が多く、手術治療が必要です。S状結腸捻転では、大腸内視鏡により、貯留したガスと内容を吸引して、大腸の軸捻転を解除することが可能な場合があります。
絞扼を認めない腸閉塞では、緊急手術を行わずに治療できる場合があります。保存的治療と言って、絶食+点滴、そして胃管やイレウス管といった鼻から胃や腸まで管を入れることで、溜まった消化管液を体外に出し、消化管内圧を減圧することで腸管運動を改善させることで治癒する方法です。
腹痛のみられる病気は、腸炎などの感染症に伴う疾患が多いのですが、胃腸薬の内服などで治らない場合は、絞扼性腸閉塞のように手術が必要な場合があり、注意する必要があります。
こんにちわ2021年6月号 -メディカルライフ教育出版発行の「こんにちわ6月号」より転載