過敏性腸症候群という病気について 放射線科部長 吾妻 佐奈江(こんにちわ2024年3月号)
過敏性腸症候群とは、大腸や小腸に異常がないにも関わらず、下痢あるいは便秘等の便通異常や腹痛、腹部膨満感等のお腹の症状が出現する病気です。過敏性腸症候群が発病あるいは症状が悪くなる原因として身体的、精神的ストレスが大きく関与しており、ストレスの多い現代、この病気で悩んでいる人が多いと言われています。男性は下痢型が多く、女性は便秘型、あるいは下痢と便秘を繰り返す混合型が多いとされています。
診断としては、ローマ基準という過敏性腸症候群の国際的な診断基準があります。過去3か月間に少なくとも週1回の頻度で腹痛が見られ、かつ以下の基準の2つ以上に該当する場合に診断されます。
・排便に関連した痛みがある
・痛みが排便回数の変化に連動している
・痛みが便の硬さの変化に連動している
さらに便の状態により①便秘型②下痢型③混合型④分類不能型に分類されます。
診断の上で重要なことは症状の原因となる他の病気が隠れていないかを診察及び諸検査で行う必要があります。検査を行った上で結果に異常が見られないにも関わらず、お腹の症状がある場合は過敏性腸症候群として治療を行います。
過敏性腸症候群の治療はまず、生活習慣の改善です。(できれば苦労はしないと思いますが)ストレスをためない、睡眠・休養を取る、暴飲暴食を避ける、便秘型の場合は繊維の多い食物摂取を勧め、下痢型の場合は刺激物や高脂肪の食べ物を避けるよう勧めます。それでも過敏性腸症候群の症状が続く場合は内服薬での治療を行います。それぞれ症状に合った内服薬を選択して治療を行います。
毎日たくさんの大腸内視鏡検査を行っていると、大腸粘膜は全く異常がないのに腹痛・便通異常で悩んでいる患者さんに多く遭遇します。
ストレスや緊張・不安でお腹が痛くなる、便秘や下痢を繰り返す等、お腹の症状で悩んでいる方は、病院へ受診し相談してみてはいかがでしょうか?
放射線科部長 吾妻 佐奈江