西条中央病院ニュースvol.25 麻酔を受けられる患者様へ 麻酔科 葛川 洋介
手術のために麻酔が必要な患者様の多くは、これまでにご関心を持つ機会が少ないため、麻酔についてあまり知識がない方が普段の診療で多くおられるように思います。今回を機に、患者様に少しでも麻酔・麻酔科医を知っていただければと思います。
麻酔とは?
手術や処置は、痛みや出血、その他のストレスを伴います。このストレスは、手術中だけの問題ではなく、手術後の回復にも影響を与えます。麻酔は、手術が安全に行えるように、手術によるストレスから患者様の身体を守り、全身の状態を良好に維持することを最大の目的とした医療行為です。
麻酔科医とは?
麻酔科医は、手術室に入室してから退室するまでそばに付き添って、患者様の安全を守ります。さらに、手術中の麻酔管理に留まらず、手術前や手術後の患者さんの全身状態を維持・管理するために、細心の注意を払って診療を行います。
実際の麻酔方法は?
・全身麻酔(ぜんしんますい):全身麻酔では、吸入麻酔薬や静脈麻酔といった主に脳に作用する麻酔薬を使用し、術中には意識がない深い睡眠状態になります。通常は、点滴から静脈麻酔薬を投与して数十秒以内に意識がなくなりますが、意識がなくなった時点で術中の安全な気道確保のために、気管内に管を入れ(気管挿管)、人工呼吸を行いながら手術終了まで麻酔薬を投与します。気管挿管の際には、その操作を円滑かつ安全に行うために、筋肉の緊張を取り除く薬を点滴から投与します。全身麻酔薬の投与量は、手術の進行や患者さんの状態に合わせて調整しますので、途中で切れることはありません。手術終了後、麻酔薬投与を中止すると、個人差はありますが10~20分程度で目が覚めます。呼びかけに目を開けたり、手を握ったり、足先を動かせるようになった段階で気管の管を抜きます。麻酔から覚めた後、意識、血圧や呼吸状態が安定していることを確認した後、病室に戻ります。
・脊髄くも膜下麻酔(せきずいくもまくかますい):横向きの状態で腰から注射を行い、くも膜と呼ばれる脊髄を覆っている膜の中にある脳脊髄液(のうせきずいえき)中に局所麻酔薬を投与することにより、主に下半身の痛覚(つうかく)を遮断する局所麻酔法(きょくしょますいほう)です。帝王切開手術や下肢手術をはじめ、手術部位が臍部以下の下半身に限定される場合が適応となります。脊髄くも膜下麻酔では、痛みの感覚は3~4時間程度でなくなりますが、触れられている感覚は残ります。十分な麻酔範囲が得られない場合には、全身麻酔に変更することがあります。
・硬膜外麻酔(こうまくがいますい):背中や腰に注射する局所麻酔法ですが、脊髄くも膜下麻酔とは異なり、脊髄を覆うくも膜と硬膜の外側に局所麻酔薬や鎮痛薬を投与します。硬膜外麻酔単独で手術を行うことはまれで、全身麻酔と併用する場合が大部分です。術後鎮痛(じゅつごちんつう)にも効果的ですが、手術の内容や術後痛の程度等により適応できない場合があります。
患者様との話し合いの上で、麻酔科医が患者様の手術内容に最適な麻酔方法を選択します。ご希望があればご相談下さい。