西条中央病院ニュースVo.l18 予防接種は親から子への最高のプレゼント! 小児科 濱田 淳平
「感染症で入院する子どもたちが減ってきている」。これは多くの小児科医が、最近よく口にする話題です。もちろん少子化の影響はあるかもしれませんが、最大の理由は予防接種の普及と考えています。私が小児科医になった15年程前に比べても、細菌性髄膜炎・肺炎・難治性中耳炎、嘔吐下痢に伴う重症の脱水で入院する子どもは明らかに減少しています。これは、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン・肺炎球菌ワクチンの定期接種化(原則無料化)、ロタウイルスワクチンの開始によるところが大きいと思います。また、水痘(水ぼうそう)ワクチンも最近定期接種が開始され、既に外来を受診する水痘の子どもが減ってきていると実感しています。水痘と同じウイルスが原因となる帯状疱疹を減らす上でも良い状況といえます。
予防接種の数が増えたことにより、1回に2種類はもちろん、種類の同時接種も珍しくない光景となりました。「まだ生まれて2ヵ月くらいの子どもに何箇所も注射するなんてかわいそう」と思われる方も少なくないと思います。しかし、予防接種をしないことで病気にかかったり、重症化してしんどい思いをすることを考えると、まだ物心がつかず、痛みへのストレスが比較的少ない乳児期早期に予防接種を進めておくことは大事なことです。また生後6ヵ月頃には、母親からもらった免疫力が低下しますので、そういう意味でも理にかなっていると思います。
日本は医療全体では先進国ですが、予防接種においてはまだまだ後進国です。本年10月より、ようやくB型肝炎ワクチンの定期接種が開始されます(現在は任意接種で原則自己負担になります)。「なぜ子どもにB型肝炎ワクチン?」と思われるかもしれません。実は、乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染すると、成人に比べて生涯体内にウイルスが残る状態(持続感染)になりやすく、成人になって、慢性肝炎や肝硬変・肝がんに移行しやすいと言われています。一般に集団生活の場でB型肝炎ウイルスの感染が起こる事は稀とされていますが、保育所内での感染事例の報告もあり、ワクチンによる感染予防が不可欠といえます。
「わが子が元気に成長してほしい」親なら誰もが願うことだと思います。予防接種こそ「親からわが子への最高のプレゼント!」です。