こんにちわ2021年12月号 妊娠中、授乳中のコロナウイルス感染症ワクチン接種について 産婦人科 主任医長 村上雅博
新型コロナワクチン接種が進み、多くの方が接種を受けています。一方で妊娠中や授乳中のか たのなかには接種した方がいいのか、しない方がいいのか迷っている方もいらっしゃると思われ ます。 妊娠中についてはコロナワクチンの添付文書には妊婦又は妊娠している可能性のある女性には 予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種することと記載されています。 動物実験ではワクチン接種で赤ちゃんに悪影響は認められていません。またアメリカの研 究ですが妊婦さんと一般女性でワクチンの副反応は同程度と報告されています。ワクチン接種によ る流産、早産や胎児の奇形の増加も報告されていません。さらに妊婦さんはコロナウイルス感染 による重症化や早産のリスクが上昇するのでワクチン接種はメリットがあると考えられています。 アメリカ疾病対策センターは妊婦さんへのワクチン接種を強く推奨していますし、日本産科婦人 科学会は妊婦さんは妊娠の時期を問わず接種を勧めています。 授乳中についてはコロナワクチンの添付文書には予防接種上の有益性及び母乳栄養の有益性を 考慮し、授乳の継続又は中止を検討することと記載されています。ワクチン接種後の母乳移行につ いて調べた研究では、母乳中にワクチンの成分が検出されなかったと報告されており、授乳中で もワクチン接種は問題ないと考えられます。加えて、ワクチン接種で作られた抗体は母乳に分泌さ れ赤ちゃんをコロナ感染から守る効果も期待できます。 妊娠を希望されている方の中には、ワクチンで不妊になるのではないかと心配されているかた もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような科学的根拠は全くありません。動物実験でワ クチンを接種しても成分は卵巣にほとんど届かないこと、ワクチン接種をしても妊娠率や赤ちゃんの数に差がないことが報告されています。実際にヒトでもワクチン接種後に妊娠されたかたがたくさん いらっしゃいます。 妊婦さんの感染経路の80%が夫やパートナーからと報告されていますので、妊婦さんの夫や パートナーのワクチン接種も勧められています。