こんにちわ2020年3月号 毎年多くの若い女性から「いのち」と「未来」が奪われています 産婦人科 吉田望
ある子宮頸がん患者さん(28歳、未婚)の症例です。
平成○年3月、婚約を機に初めて子宮頸がん検診を受診。細胞の異常を指摘され、○○大学病院紹介受診。内診・MRI・CTなどで子宮頸がんⅡa期と診断。4月、広汎子宮全摘、両側卵巣・卵管摘出、骨盤内リンパ節摘出術(術後、排尿訓練実施)。5月、術後の同時放射線・化学療法。
平成△年1月、腟に再発。2月、再発腫瘍・膀胱・直腸合併切除、人工尿管・人工肛門造設術。8月、骨盤リンパ節・傍大動脈リンパ節・肺に多発再発。化学療法を6カ月行うも、病状進行
平成□年5月、ご両親・婚約者に看取られて永眠(享年30歳)。
子宮頸がんは女性の子宮の入り口付近にできるがんで、ほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが性交渉で感染することによっておこります。感染後、がんになるまでに5~10年あるいはそれ以上かかります。前がん病変で自覚症状が出現することはなく、進行してはじめて症状が現れます。そのため1~2年毎の子宮頸がん検診が重要です。
子宮頸がんは国内で毎年約1万人診断され、約3千人が亡くなっています。2000年から急増しているがんです。近年は35~45歳が最も多く20歳でも罹患する方が増えています。当院でも例年1~2人程度を診断していましたが、この1年間は特に多く、8人の子宮頸がん患者さんを診断しました。子育て中の方もいました。
子宮頸がんは予防できるがんです。予防方法は「HPVワクチンの接種」と「子宮頸がん検診」です。性交前のHPVワクチンなら前がん病変も防ぎ得ます。私はHPVワクチンを接種しましたし、娘も公費(無料)年齢になったら接種させます。
「あなたは子宮頸がん検診を、お嬢さんにはHPVワクチンを」、切なる願いです。