こんにちわ2018年7月号 腸内細菌叢について 内科部長 太宰康伸
腸内細菌とは、腸の内部に生息している細菌のことで、ヒトでは100種から3000種類に及ぶ100兆個から1000兆個の菌が、互いに排除したり共生関係を築きながら生存競争を繰り広げて一定のバランスを保ち、宿主であるヒトと共存した生態系を作りだしている。重量にすると約1.5-2kgに相当し、糞便の約半分は腸内細菌か、またはその死骸である。腸内細菌叢は、大きく、善玉菌、悪玉菌、日和見菌に区分される。腸内細菌叢の状況は、菌がいるかいないかでは判断できず、それぞれの菌のバランスによって判断され、腸内環境が悪化すれば、悪玉菌有意となり、一部の日和見菌が悪玉菌化してくる。逆に、腸内環境が良くなれば、善玉菌が優位となり、一部の日和見菌が善玉菌化してくる。
腸内細菌の主な働きは、病原体の侵入防御と排除、食物繊維を消化し短鎖脂肪酸を産生、ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12・ビタミンK・葉酸・パントテン酸・ビオチンなどの各種ビタミン類の産生、腸管免疫の担い手等、多岐にわたり、宿主の健康状態に大きな影響を与えている。そのバランスの乱れが、癌、認知症、動脈硬化、虚血性心疾患、潰瘍性大腸炎、アレルギー等、多彩な疾患の発生・悪化にかかわっていることが判明し、腸内細菌叢の重要性がクローズアップされるようになってきた。
腸内細菌のバランスは、宿主であるヒトのさまざまな変化によっても変化する。大きくは、食事内容(食物繊維・発酵食品の摂取状況、動物性蛋白質・脂肪の摂取量など)、加齢(加齢とともに悪玉菌の比率が増加)、ストレスなどの精神状況の影響を受ける。それにもまして、抗生剤投与は腸内細菌叢を大きく撹乱する原因であり、その点からも抗生剤の適正使用が望まれ、抗生剤が必要な時にはきちんと服用する一方で、不必要な抗生剤を服用しないという・投与しないというメリハリの利いた対応が必要である。