赤ちゃんの体重について 産婦人科部長 村上雅博(こんにちわ2023年8月号)
メディカル教育出版発行 こんにちわ2023年8月号より
赤ちゃんの体重について
赤ちゃんの体重について「小さく産んで大きく育てましょう」と言われていました。これは大きな赤ちゃんを妊娠した母親の体重が過度に増加し、結果として発生する妊娠高血圧症や妊娠糖尿病を予防することが目的でした。最新の研究では出生時の赤ちゃんの体重と成人した時の身長に相関関係があることが報告されています。先進国では平均身長が年々高くなっていますが、日本では1970年代をピークに低くなっています。(Journal of Epidemiology& Community Healthより)妊娠期間中の過度な体重制限は考えものかもしれません。
お腹のなかの赤ちゃんの体重は超音波計測で推定体重を算出します。推定体重と実測体重では±10%の誤差があります。推定体重が3000gで実測体重が2700~3300gなら誤差範囲と言えます。産まれてからの実測体重が4000gだったなんてこともありえます。赤ちゃんが大き過ぎると骨盤で詰まってしまうので、帝王切開になることがあります。大きな赤ちゃんは、頭が出たのに肩がひっかかって腕の神経障害をおこすことがあります。妊娠糖尿病が巨大児の原因の一つとされていますが、多くの場合は原因不明です。
一方でお腹の中の赤ちゃんの成長が悪いことを胎児発育不全と言います。これは胎児の遺伝子 異常、心臓や消化管の奇形、また母体の妊娠高血圧症、胎盤機能不全などが原因とされます。安静・栄養・酸素・アスピリン・ヘパリンが有効と言われていましたが、近年これらの有効性は否定されています(Obstet Gynecol. 2019)。胎児発育不全では赤ちゃんを元気な状態で出産してあげることが何よりも重要です。新生児医療は近年めざましく進歩しており、多少早産になっても良い状態で生まれた赤ちゃんは障害なく成長します。したがって赤ちゃんがお腹にいたほうが良いのか、妊娠を終了して母乳や点滴で栄養したほうがいいのか正しく判断することが重要なのです。判断の材料として赤ちゃんの心拍モニターや超音波で体重の増加が止まっていないか、羊水は十分あるか、胎動があるかなどを確認します。
産婦人科部長 村上 雅博