西条中央病院ニュースvol.26 大腸がんの手術治療の進歩について 副院長 外科 小野仁志
大腸がんの手術治療の進歩について
内視鏡機器、画像表示機器の進歩により、消化器外科の手術手技自体が変化しています。その代表が腹腔(ふくくう)鏡(きょう)下手術(かしゅじゅつ)です。小さな創から腹腔(ふくくう)鏡(きょう)というカメラを入れて、体の腔内をモニターに拡大して映し出し、モニターを見ながら手術を行う方法です。
西条中央病院でも、2015年12月に新病院オープンの際に、手術室も4室と増加し、そのうち2室はLED無影(むえい)灯(とう)と天井からの吊下げ式モニターを完備した内視鏡手術専用室としました。
消化器外科の分野では、先ず腹腔(ふくくう)鏡下(きょうか)胆(たん)のう摘出術(てきしゅつじゅつ)が一般的となり、西条中央病院でも1992年より開始し、現在90%程度が腹腔(ふくくう)鏡(きょう)手術(しゅじゅつ)になっております。さらに大腸がんに対する手術治療についても腹腔(ふくこう)鏡(きょう)手術(しゅじゅつ)の割合が高くなっております。
2019年予測値では、男女合わせると、年間大腸がん罹患数は155,400人でがんの中で一番多く、年間大腸がんによる死亡数は54,400人であり、肺がんに次いで2番目に多い状況です。直接、大腸がんを診断するためには、大腸ファイバーによる精査が必要であり、また腫瘍が見つかった場合の確定診断には、大腸ファイバー下に生検が必要です。大腸がん検診は、便の潜血(せんけつ)反応(はんのう)を見る検査ですが、陽性であった場合には、是非とも大腸ファイバーによる精密検査を受けていただきたいと考えます。
検査をすることで、早期に見つかったリンパ節転移がない粘膜あるいは浅い粘膜下(ねんまくか)組織(そしき)までの大腸がんに対しては、大腸内(だいちょうない)視(し)鏡下(きょうか)に粘膜(ねんまく)切除術(せつじょじゅつ)によりがんを取り除くことが可能であり、腸管(ちょうかん)切除(せつじょ)が不要です。
この段階を超え、リンパ節転移を認めたり、筋層(きんそう)以上に浸潤した大腸がんには腸切除、リンパ節廓清(かくせい)が必要です。その場合には、腹腔(ふくくう)鏡下(きょうか)大腸(だいちょう)切除術(せつじょじゅつ)が適応となります。この手術は、傷が小さく、術後疼痛が少ない。術後の腸管等の癒着が少ない。また、拡大視効果により微細な変化を観察しながら手術ができる等の利点があります。
当院では、2011年1月より愛媛大学消化管腫瘍外科渡部教授のご指導の下、腹腔(ふくくう)鏡下(きょうか)大腸(だいちょう)切除術(せつじょじゅつ)を開始しました。2018年に大腸外科専門の松野医師が着任してから2018年は大腸がんに対する外科手術17例のうち12例が腹腔鏡下大腸切除術(ふくくうきょうかだいちょうせつじょじゅつ)であり、2019年度は16例中12例が腹腔(ふくくう)鏡下(きょうか)大腸(だいちょう)切除術(せつじょじゅつ)となり、大腸手術の75%を腹腔(ふくくう)鏡(きょう)手術(しゅじゅつ)で行っております。
腹腔(ふくくう)鏡(きょう)手術(しゅじゅつ)は、執刀医の能力は勿論のこと、サポートする外科医、麻酔医、手術室スタッフの力も重要であり、今後さらにチーム力をアップしていきます。
副院長 外科 小野仁志
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