西条中央病院ニュースVol.10 最新のMRI装置が入ります 副院長 放射線科 二宮克彦
最新のMRI装置が入ります
本年5月に待望の最新MRI装置(philips社ingenia1.5T)が導入されることになりました。今回は新しいMRIについて紙面の許す範囲で紹介させて頂きます。
<新しいMRIの特長>
1.検査空間が広くなります
MRIは筒状の機械の中に入り寝た状態で検査を行いますが、従来狭かった筒の径が広くなり、明るく開放感のある検査環境となります。体格が大きな方でも苦痛無く、また閉所恐怖症の方も検査可能になるものと期待しています。
2.「高分解能」「広範囲」「より速く」撮影可能になります
従来と大きく変わった点は受信コイルがフルデジタル化及び多チャンネル化したことです。デジタル化により得られる信号量が多くなり、多チャンネル化により速い撮影が可能となります。その結果従来と同一の撮影時間であれば、より広範囲の撮像が可能となり、また分解能を上げて細かく撮影した場合も十分に診断可能な画質が得られ、病変の発見率や診断能は確実に向上すると考えられます。
<新しいMRIの最新機能>
次に新しいMRIの代表的な最新機能について紹介します。
1.心臓疾患(狭心症、心筋梗塞など)の診断能向上
心筋梗塞や心臓の壁運動の診断においてMRIは現在最も精度の高い検査法の1つとされていますが新しい装置ではさらに正確な評価が可能になります。また従来の冠動脈MRI撮影(MRA)はCT(造影剤使用)と比較し分解能が劣り鮮明な画像を得
るのが困難でしたが、新しい装置では改善され良質の画像が安定して撮れるようになります。MRAの利点は、1)腎機能が悪く造影CT検査が出来ない方も造影剤を使用せずに撮影可能、2)CTの苦手とする石灰化の強い血管もMRIではその影響を受けずに撮影可能、3)被爆の心配が無い、等が挙げられます。また血管の狭窄はわかっても実際にその血管が胸痛や狭心症の原因かどうかを判定するには核医学検査(心筋シンチ)が必要でしたが、最新のMRIでは造影剤を用い潅流画像を得ることで短時間で診断可能とされています。虚血性心疾患の診断及び治療方針決定にMRIは今まで以上に重要な役割を果たしていくでしょう。
2.癌の発見や病期診断への期待
MRIの拡散強調画像は体内水分子の拡散の程度を画像化したもので、現在主に脳梗塞の早期診断に繁用されていますが近年癌の発見にも鋭敏度が高いことが判明しています。悪性腫瘍の検出については既にペットが有名ですが、ペットと比較し特異性は若干落ちるものの鋭敏度については遜色が無いとされています。すべての癌が描出できるわけではありませんが拡散強調画像は今後癌のスクリーニングや病期診断に非常に有力な診断法の1つになると思われます。従来機では撮影に時間がかかり、画質も十分と言えませんでしたが新しいMRIでは比較的短時間に全身が撮影可能となり初めて日常臨床で使えるレベルになったと言えます。
3.非造影MRA(MRIによる血管撮影)の進歩
下肢や体幹部のMRAは従来機でも撮影は可能でしたが時間もかかり鮮明な画像を得るのが困難でしたが新しいMRIでは比較的短時間に高画質のMRAが可能になります。CTと比較すると若干分解能は落ちますが造影剤を用いずに検査が可能で、腎機能の悪い方や造影剤に対してアレルギー体質の方にも安心して施行できます。以上新しいMRIについて解説してきましたが、高性能MRI装置が市民の皆様のお役に立つように今後とも一層努力していきたいと考えております。
副院長 放射線科 二宮克彦