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2006-04-24

西条中央病院ニュース2006年4月号 「アレルギー性鼻炎の現状と治療」 耳鼻咽喉科医長 木﨑久喜

「アレルギー性鼻炎の現状と治療」 

  アレルギー性鼻炎は鼻粘膜のⅠ型アレルギー性疾患で、原則的には発作性反復性のくしゃみ、水性鼻汁、鼻閉を三主徴とする。全国調査による有病率はダニ・ハウスダストによる通年性アレルギー性鼻炎が約18%、スギ花粉症が1316%、イネ科、キク科、ヒノキなどスギ以外の花粉症が約10%とされている。最近ではスギ花粉症の増加が全国的に著しく、ダニ・ハウスダストアレルギーは都市部では横ばい、町村部では増加傾向とされている。

 そのアレルギー反応は、まず花粉などの抗原が鼻粘膜に付着し、肥満細胞からヒスタミンが放出されることで始まる。ヒスタミンは鼻腔の知覚神経を刺激し、くしゃみ中枢を介してくしゃみ発作を起こす。同じ刺激が分泌中枢、副交感神経を介して鼻腺から鼻汁を分泌する。つまり、くしゃみと鼻汁は一連の反応と考えられる。一方ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンA2などは鼻粘膜血管を直接刺激し、その透過性亢進、拡張、血流うっ滞などにより鼻閉を起こす。

 くしゃみ、水性鼻汁、鼻閉の三主徴をもち、鼻汁好酸球検査、血清IgE抗体検査(または皮膚テスト)、誘発テストのうち2つ以上が陽性ならばアレルギー性鼻炎と確定診断できるが、1つのみ陽性でも典型的症状を有し、アレルギー検査が中等度以上の陽性であれば診断してよい。また副鼻腔炎の合併を調べる為レントゲン検査やCT検査を併せて行うことがある。

 薬物治療として軽症例では第2世代抗ヒスタミン薬(抗Hi)が使用される。中等症のくしゃみ・鼻汁型では抗Hi、鼻閉型では抗ロイコトリエン薬(抗LTs)または抗トロンボキサンA2薬(抗TXA2)が使用され、いずれの型も必要により噴霧用局所ステロイド薬が追加される。重症のくしゃみ・鼻汁型では抗Hiと局所ステロイドが併用され、鼻閉型では抗LTsまたは抗TXA2と局所ステロイドが併用される。重症の鼻閉型では点鼻用血管収縮薬も短期間に限り使用されるが、漫然と使用を続けると薬剤性鼻炎を起こし、慢性的な高度の鼻閉を来たすため、十分注意が必要である。なお一部の施設で行われている高用量ステロイド筋肉注射は副作用発現の問題もあり、十分に適応を吟味されるべき治療法である。

 重症例では薬物治療以外にも、鼻粘膜の変調を目的としたレーザー鼻粘膜レーザー焼灼術、鼻腔通気度の改善を目的とした粘膜下下鼻甲介切除術、鼻中隔矯正術、鼻茸切除術、鼻汁の改善を目的とした後鼻神経切断術など手術療法を行うことがある。

 今日、アレルギー性鼻炎(花粉症)はわれわれ日本人にとって国民病と言っても過言ではない。今後も患者は増え続けると予想される。決定的、根本的治療法が見出されていない以上、それぞれの患者が自身の病状を理解し、自分のライフスタイルに合った、安全かつ適切な治療を選択することが望まれる。

耳鼻咽喉科 医長 木﨑久喜

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